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トラクターの取扱説明書には、バッテリーが上がったときのブースターケーブルのつなぎ方が図で載っています。4本目をつなぐ先は、バッテリーのマイナス端子ではありません。バッテリーから離れたエンジン本体です。
クボタのトラクター取扱説明書2機種で、同じ記載を確認しました。
ところが「トラクター バッテリー上がり」で上位に出た5本を、本文まで読んでみました。同じつなぎ方を示していた記事は1本もありません。2026年8月時点で、実際に数えた結果です。
農閑期が明けて、久しぶりにトラクターのキーを回したら、セルが弱い。あるいは音がするだけで回らない。
軽トラは動くので、つなげば何とかなりそうだけれど、順番をうろ覚えのまま試すのは怖い。そんな場面で開くページだと思います。
結論から言うと、バッテリー上がりの多くは充電で戻ります。ただし、つなぐ順番と最後の1本の位置を間違えると、火花が出て、エンジンルームで引火することがあります。実際に、その事故は起きています。
この記事で分かることは、次の4つです。
- ブースターケーブルをつなぐ順番と、4本目をどこにつなぐか
- セルが回らない原因のうち、バッテリー以外に先に確かめること
- 充電で戻るバッテリーと、戻らないバッテリーの見分け方
- 農閑期にどれだけ放置すると危ないのか、来年に向けて何をするか
トラクターのバッテリー上がりで、いま動かないときにやること
まずは、目の前の機械を動かすところから見ていきます。
順番は、原因の切り分け、つなぎ方、やってはいけないこと、かかった後の扱い、戻るかどうかの見分け方、そして費用です。急いでいる方は、次の見出しから読んでも大丈夫です。
セルが回らない原因は、バッテリーだけとは限らない
結論から言うと、ケーブルを出す前に、レバーの位置を確かめてください。
というのも、いまのトラクターには安全装置が付いているからです。クボタのトラクター取扱説明書には、安全スイッチのことが書かれています。具体的には、シャトルレバーを中立にし、あんしんPTOスイッチを切にしないとエンジンは始動しません。
つまり、バッテリーがどれだけ元気でも、レバーが入っているだけでセルは回りません。
実際に確かめる順番は簡単です。まずキースイッチを切り、平らな場所であることを確かめます。
次に変速レバー類をすべて中立に戻し、あんしんPTOスイッチを切にします。そのうえで駐車ブレーキを掛け、もう一度キーを回します。
つまり、これで動けば、バッテリーは無関係だったことになります。
次に、音でも切り分けられます。まったく音がしない、あるいはカチカチと鳴るだけで回らない場合は、電気が足りていない可能性があります。ただし、音だけで原因は決まりません(🟡次に挙げる手順で確かめてください)。
反対に、セルは勢いよく回るのにエンジンがかからない場合は、別の原因を疑うことになります。燃料やヒューズまで含めた切り分けは、トラクターのエンジンがかからない、修理を呼ぶ前に見る5か所で順番に整理しています。電池工業会は、スタータが回るのにエンジンがかからない場合について説明しています。つまり、バッテリーではなく車両側の問題であり、車両の点検が必要だとしています。
| セルの様子 | 考えられること | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 何の音もしない | 安全スイッチが働いている場合があります(クボタ取説) | レバーが中立か・PTOが切か |
| 音がするだけで回らない | 電気が足りていない可能性(🟡音だけでの判断は目安です) | 端子の緩み・充電の状態 |
| セルは回るがかからない | バッテリーではなく車両側の問題(電池工業会) | 燃料や予熱。農機店に相談 |
そのため、最初の数分は「電気の話なのか、そうでないのか」を分けることに使ってください。ここを飛ばすと、必要のないケーブルやバッテリーを買いに走ることになります。
ブースターケーブルのつなぎ方は、取扱説明書が図で指定している

つなぐ順番は、メーカーが図の番号で決めています。
クボタのトラクター取扱説明書には「バッテリあがりの処置」という項目があります。そこでは、ブースターケーブル(バッテリー同士をつなぐ太い電線)を番号順に接続するよう指示されています。編集部で確認した2機種の取説とも、同じ文言でした。
取扱説明書が示している順番
- トラクターのキースイッチを切にする
- 上がったトラクターのプラス端子につなぐ
- 救援車のプラス端子につなぐ
- 救援車のマイナス端子につなぐ
- トラクターのエンジン本体(バッテリーから離れた金属部)につなぐ
外すときは、つないだ順の逆から
4本目が端子ではない理由は、取説にはっきり書かれています。バッテリーからは可燃ガスが発生します。そのため、マイナスケーブルの端を直接マイナス端子につなぐと、引火するおそれがあるからです。
JAFの案内も同じでした。上がった車のマイナスは、端子ではなくエンジンの金属部分などにつなぐとされています。
つないだ後の手順も決まっています。まず救援側の車を始動し、エンジン回転を少し高めに保ちます。それからトラクターを始動します。
始動できたら、ケーブルは接続したときと逆の順序で外していきます。
始める前の確認も忘れないでください。JAFは、被膜の破損やケーブルの断線、端子をはさむクリップ部分のガタがないかを事前に点検するよう案内しています。加えて、変速は中立にしてサイドブレーキを必ず掛けることも挙げられています。
結局のところ、この順番と4本目の位置さえ守れば、作業自体は数分で終わります。お使いの機種の手順を確かめたい方は、クボタ公式の「取扱説明書検索」を参照してみましょう。
やってはいけないつなぎ方と、実際に起きた火災

ここは損得ではなく、安全の話です。
農作業安全情報センターの農業機械事故情報に、2017年5月の事例が記録されています。新しいバッテリーに自分で交換しようとした際、端子の接続でスパークが発生しました。そして、近くにあった燃料タンクの軽油などに燃え移り、被害が拡大しています。
火花そのものは小さくても、周りに燃料や可燃ガスがあれば結果は変わります。だからこそ、メーカーは接続の順番と位置を細かく指定しているわけです。
クボタの取説が挙げている注意は、次のとおりです。
取扱説明書が禁止していること
- プラスとマイナスの端子を接触させる
- プラスとマイナスを逆につなぐ(トラクターや救援車の電子機器が壊れることがあります)
- ケーブルが冷却ファンなどに巻き込まれる状態で作業する
- 12V以外のバッテリーを積んだ車で救援する
- 救援側にトラクターを使うとき、作業機を上げたままにする
救援車の電圧は、特に間違えやすいところです。クボタの取説は、救援車は必ず12Vバッテリー車を使うようにと指定しています。JAFも、トラックは24Vで電圧が違うため使用できないとしています。
JAFはトラックについて「電圧が違い24V」と説明しています。逆に言えば、判断が要るのは大型のトラックや一部の大きな機械のほうです。自分の機械が12Vなのか24Vなのか分からない方は、トラクターのバッテリーは何ボルトかの確認方法もあわせてご確認ください。
もう1点、救援する側にトラクターを使う場合は、必ず作業機を降ろしてから行うよう取説に書かれています。上げたままでは、油圧が抜けたときに落下するおそれがあるためです。
エンジンがかかった後、そのまま止めると再発する
かかったからといって、すぐキーを切らないでください。
理由は、止めた瞬間にまた始動できなくなることがあるからです。JAFは、バッテリーが寿命を迎えていたり損傷していたりする場合について案内しています。つまり、エンジンを止めると再び始動できないことがあるということです。
ただし、アイドリングで放っておけば充電されるわけでもありません。
GSユアサによると、アイドリング中の発電量は、一定速度で走っているときと比べて40%程度になることもあるとされています。オルタネーター(エンジンで回して発電する装置)は、回転数が上がるほど働きます。そのため、止まったままの低い回転では発電量が伸びないわけです。
ここで注意したいのが、放置の危険です。エンジンをかけたまま機械から離れたり、その状態で点検や整備をしたりするのは避けてください。
農林水産省が公表している農作業事故の情報にも、同じ趣旨の注意があります。実際に、エンジンを止めない状態で整備や詰まりの除去を行った巻き込まれ事故が報告されています。クボタの取説も、暖機運転中は必ず駐車ブレーキを掛けること、換気が不十分な場所では行わないことを求めています。
短い始動を何度も繰り返すのも、あまり得策ではありません。GSユアサはエンジン始動に使う電流を90〜190Aと示しており、始動のたびに大きな電気を持ち出すことになるためです。使う量が発電量を上回れば、その分だけバッテリーは減っていきます。
そのため、現実的な選択はこうなります。かかったら、その場で作業に使うか、充電が目的なら充電器につなぐ。かけっぱなしにして離れる、という選択肢は取らないほうが安全です。
充電で戻るバッテリーと、戻らないバッテリーの見分け方

実は、バッテリー上がりには、戻るものと戻らないものの2種類があります。
電池工業会は、これを「充電すれば回復する放電状態」と「充電しても回復しない寿命」の2つに分けています。そして、最も多く発生するのは前者だと説明しています。つまり、上がった時点ですぐ買い替えを決める必要はありません。
具体的には、見分ける手がかりが3つあります。
1つ目は、インジケータ(バッテリー上面にある充電状態を示す小さな窓)です。クボタの案内では、緑なら電解液の比重も液量も良好、黒なら要充電、白なら交換が必要とされています。
2つ目は電圧です。GSユアサはエンジン停止時の目安として、12.4V以上を正常としています。また、10.5〜12.3Vは充電で回復する可能性がある状態、10.5V以下は交換または重度の放電です。
3つ目は使用年数です。GSユアサは交換の目安を2〜3年とし、2年以上使ったバッテリーが上がった場合は交換の検討をすすめています。
| 見るところ | 充電で戻る可能性がある | 交換を検討 |
|---|---|---|
| インジケータ クボタ |
黒=要充電 | 白=交換が必要 |
| 電圧(停止時) GSユアサ |
10.5〜12.3V | 10.5V以下 |
| 使用年数 GSユアサ |
2年未満 | 2〜3年以上 |
電圧が12.4V以上でインジケータが緑なら、正常な状態とされています。
戻らない代表がサルフェーション(極板に硫酸鉛の結晶がたまり、充電しても元の状態に戻らなくなる現象)です。GSユアサの資料では、長期間充電不足のまま放置することが主な原因の1つに挙げられています。さらに、症状が出た場合はその後の長期間の使用は期待できないと説明されています。
加えて、バッテリーはメーカー保証の対象外になるのが一般的です。三菱マヒンドラ農機のロングライフ保証でも、保証対象外の消耗品にバッテリーが明記されています。
充電しても戻らず、買い替えを考えることになった方は、トラクターのバッテリー交換の判断と費用の目安もあわせてご確認ください。
交換しても改善せず、機械そのものを手放すか迷っている方は動かないトラクターの買取を、修理に出したらいくらになるのかを先に知りたい方はトラクターの修理費用の相場をご覧ください。
自分でやるか頼むか|JAFはトラクターに来ない
先に押さえておきたいのは、JAFのロードサービスがトラクターを対象外にしている点です。
JAF公式サイトの対象車種のページには、大型特殊自動車および小型特殊自動車が対象外と明記されています。そして、その例としてトラクターが挙げられています。自動車と同じ感覚で呼んでも来てもらえないため、あてにして待つと時間だけが過ぎます。
では、どこに頼むか。窓口はJA(農協)の農機センターや、農機販売店になります。
JAハイナン農機センターの農機修理標準技術料金表を見てみます。バッテリ充電が標準時間0.3時間で1,980円、出張料は一律1,650円と示されていました。整備技術料金は時間あたり6,600円です(🟡2026年8月時点の同センターの料金表・税込)。
JA伊勢の料金表でも、修理・整備料金は作業員1人1時間当たり6,600円で一致していました。出張料金は2,200円です(🟡令和5年時点)。
| 項目 | 金額の目安(🟡あくまで目安) | 確認した料金表 |
|---|---|---|
| バッテリ充電の工賃 | 1,980円(標準0.3時間) | JAハイナン農機センター |
| 出張料 | 1,650円/2,200円 | JAハイナン/JA伊勢 |
| 整備の時間単価 | 6,600円/1時間 | JAハイナン・JA伊勢(2件で一致) |
🟡2026年8月時点で確認した2つのJAの料金表です。税込・地域のJAや農機店によって異なります。
つまり、来てもらって充電だけを頼む場合、出張料と工賃を合わせて3,000円台後半からという見当になります。
もう1つ、時期の問題があります。春先は農機センターが最も忙しくなる時期です。
JA播磨は、春季農繁期に土日祝も営業すると案内しています。また、JA埼玉ひびきのも5月から7月にかけて繁忙期の営業時間を設けています。
そのため、田起こしを始めたい週にすぐ来てもらえるとは限りません。自分で充電できる用意があるかどうかで、待たされる時間が変わってきます。金額の目安は変動しますので、最終的な判断はお近くのJA農機センターや農機販売店にご相談ください。
トラクターのバッテリー上がりが、農閑期明けに集中する理由
ここからは原因側の話です。
なぜ春先に同じことが起きるのか。感覚ではなく、メーカーが示している数字と、実際の作業の予定を突き合わせて見ていきます。
メーカーが示す「放置していい期間」は1か月前後
結論から言うと、農機メーカーが示している目安は1か月前後です。
クボタは長期格納時のメンテナンスとして、1か月以上トラクターを使用しない場合は格納時の点検を実施するよう案内しています。そのなかで、バッテリーのマイナス端子を外しておくことと、月に一度を目安にエンジンを始動することを挙げています。
井関農機のセルフチェックBOOKは、さらに具体的です。バッテリーは使用しなくても自己放電する(使っていなくても電気が少しずつ減っていく)と説明されています。加えて、補充電の目安を夏期は1か月ごと、冬期は2か月ごとと書いています。
バッテリーメーカー側の説明も、方向は同じです。GSユアサは、3〜4週間乗らないだけでバッテリー上がりを起こしてしまうことがあると説明しています。
ここで1つ、混ざりやすい数字があります。GSユアサの資料には、補充電の時期の目安として夏季は3か月に1度、冬季は6か月に1度という記載もあります。
ただしこちらは、機械に載せていない保管中のバッテリーについての目安です。機械に取り付けた状態の話とは条件が違うため、そのまま当てはめないほうが安全です。公益社団法人日本電気技術者協会の解説でも、放置する場合はおおむね1〜3か月に1回程度の補充電が挙げられています。
| 出典 | 示されている目安 | どんな状態の話か |
|---|---|---|
| クボタ | 1か月以上使わないなら月に一度エンジンを始動 | 機械に載せたまま格納 |
| 井関農機 | 補充電は夏1か月ごと・冬2か月ごと | 機械に載せたまま |
| GSユアサ | 3〜4週間乗らないだけで上がることがある | 自動車の場合 |
| GSユアサ(保管中) | 補充電は夏3か月・冬6か月に1度 | 機械に載せていない保管中 |
ちなみに、減り方は一定ではありません。GSユアサの資料によると、自己放電の量は充電した直後に大きく、時間が経つほど少なくなっていきます。加えて、電解液の温度が高いほど反応が活発になり、自己放電は進みやすくなるとされています。
夏場に日の当たる納屋へ置いているなら、その分だけ条件は厳しくなるということです。
農閑期に自分で補充電できるようにしておきたい方は、農機具用バッテリー充電器の選び方もあわせてご確認ください。
稲作の作業暦と突き合わせると、何か月あくのか

次に、実際の作業の予定と重ねてみます。
JA福井県のコシヒカリ栽培暦は、4月の圃場準備から10月の収穫期までで組まれていました。JA呉の水稲栽培暦も、月の欄は4月から10月までです。2件とも、11月から3月にあたる欄はありません。
もちろん、収穫後の秋起こしがあります。JA福井県の栽培暦にも、収穫後は暖かいうちに秋起こしを実施して稲ワラの腐熟を促す、と書かれています。
とはいえ、その秋起こしを終えてしまえば、次にトラクターを動かすのは春の圃場準備です。暦のうえでは、そこに作業が入っていません。
先ほどの1か月前後という目安と並べると、この空白がどれだけ長いかが見えてきます。メーカーが「1か月以上使わないなら」と言っている条件を、農閑期は毎年、何度も超えていくわけです。
実際、バッテリーメーカー側もこの使われ方を前提にしています。エナジーウィズは、農業機械用バッテリーの特長を公表しています。具体的には、農閑期に長期間エンジン始動がない使用環境に配慮した設計であるとしています。
もちろん、空く期間は地域や作付けによって変わります。畑作や露地野菜を組み合わせていれば、冬でも機械を動かす日はあるはずです。それでも、水稲だけを見れば秋から春までまとまった空白ができることに変わりはありません。
つまり、春先に上がるのは機械や使い方が特別に悪いからではありません。稲作の予定と、バッテリーが電気を保っていられる期間が、そもそもかみ合っていないということです。
冬が重なると、必要な電気は増えて出せる電気は減る

放置期間の長さに、冬の条件が重なります。
GSユアサによると、エンジン始動に必要な電流は夏で約90〜120A、冬は約150〜190Aと、およそ1.5倍になります。一方で、バッテリーが出せる容量は温度で変わります。電解液が25℃のときを100%とすると、0〜10℃では80〜90%まで下がります(🟡乗用車のデータです)。
| 項目 | 夏 | 冬 |
|---|---|---|
| 始動に必要な電流 | 約90〜120A | 約150〜190A(約1.5倍) |
| 出せる容量 | 25℃で100% | 0〜10℃で80〜90% |
| 充電のしやすさ | 通常どおり | 反応が鈍り充電不足になりやすい |
🟡いずれもGSユアサが公表している乗用車のデータです。
加えて、低温では充電の効率も落ちます。GSユアサは、温度が下がると化学反応が鈍くなり、充電しにくくなって充電不足につながると説明しています。
井関農機のセルフチェックBOOKにも、同じ趣旨の記載があります。気温が低下するとバッテリーの性能も低下するため、冬期は特に管理に注意するよう書かれています。
さらに、放電したまま冬を越すと凍結の問題が出てきます。
エナジーウィズによると、バッテリー液は充電状態によって凍る温度が変わります。満充電ならマイナス70℃前後まで凍りませんが、過放電になると0℃付近で凍るとされています。凍ると体積が膨らみ、電槽(バッテリーの容器部分)が割れてしまうこともあります。
そうなると、充電では戻りません。冬の放置がこわいのは、電気が減ることだけでなく、こうして本体を壊してしまう可能性があるためです。
エナジーウィズは、防ぐ方法として定期的な充電と比重の点検、長期駐車時の配線外しを挙げています。また、充電する目安を20℃で比重1.240以下としています。
寒い日の始動そのものにも、手順があります。クボタの取説は、寒冷時の暖機運転の目安も示しています。マイナス10℃以上で5分間、マイナス10〜20℃で5〜10分間、マイナス20℃以下では20分間以上です。
ただし、暖機運転中は必ず駐車ブレーキを掛けること、換気が不十分な場所では行わないことも同時に指示されています。納屋の中でかけたまま作業をするのは避けてください。
同じ農閑期でも、上がりやすくしている条件がある
同じように置いていても、上がる機械と上がらない機械があります。
まず、切り忘れです。クボタの取説は、キースイッチの切り忘れによるバッテリー上がりを防ぐため、必ずキーを抜くよう求めています。
加えて、安全キャブ仕様ではルームランプの消灯も挙げられています。降りるときの数秒の違いが、春先に効いてきます。
次に、バッテリー自体の状態です。取説は、液面が下限を下回ったまま使用や充電をしないよう求めています。というのも、その状態を続けると内部の劣化が進んで寿命を縮めるうえ、爆発の原因になることがあるためです。
電池工業会も、液量が上限と下限の間にあるかを点検するよう案内しています。もし半分以下に下がっている場合は、上限まで精製水を補充します。点検の頻度は、少なくとも1か月に1回、または使用状況から判断した適切な時期とされています。
あわせて、取付金具やターミナル部の緩み、白い粉やサビなどの腐食がないかも点検項目に挙げられています。腐食が見られる場合は、ワイヤーブラシなどで取り除くよう案内されています。液量と端子まわりは、農閑期に入る前に一度見ておきたいところです。
3つ目は配線です。農作業安全情報センターの農業機械事故情報には、2017年9月の事例もあります。
耕うん作業中にメインハーネスがショートし、エンジンルームから発火しました。そこで、配線部を定期的に点検し、緩みや損傷は速やかに交換・修理するよう呼びかけられています。
最後に、年数です。GSユアサは交換の目安を2〜3年としています。
3年を超えて使っているバッテリーであれば、置き方を直しても上がりやすさは残ると考えておいたほうが現実的です。実際の事故事例は農作業安全情報センター 農業機械事故情報でご確認ください。
来年また上げないための3つの手

やることは3つです。どれも道具より、手順を知っているかどうかで差が付きます。
1つ目は、マイナス端子を外しておくことです。井関農機は、長期格納する場合はバッテリーを外し、日光の当たらない乾燥した場所に保存するよう案内しています。もし取り付けたまま保管するなら、必ずアース(車体側でマイナス側のケーブルを留めている部分)を外します。
あわせて、外したことをメモ書きして機械に貼っておくと便利だとも書かれています。春先に「セルが回らない」と焦る前に、そのメモが目に入る仕掛けです。
2つ目は、定期的な補充電です。井関農機の目安は、夏期が1か月ごと、冬期が2か月ごとでした。
このとき、井関農機はバッテリーを必ず車体から取り外して充電するよう求めています。取り付けたまま充電すると、電装品の損傷のほか配線を傷めることがあるためです。急速充電についても、寿命を縮めるためできるだけ避けるようにとされています。
補充電にどれくらい時間がかかるのかを知っておきたい方は、トラクターのバッテリー充電時間の目安もあわせてご確認ください。
3つ目は、月に一度のエンジン始動です。クボタが長期格納時のメンテナンスとして挙げている方法で、1か月以上使わない機械が対象になります。
ただし、前に触れたとおり、アイドリングだけで満充電まで戻ると考えないでください。かけた状態で離れないこと、平らな場所で駐車ブレーキを掛けることも守ってください。
この3つのうち、どれか1つでも入れておけば、春先の状況は変わります。すべてやる必要はありません。
冬の保管中に傷むのはバッテリーだけではありません。ゴムのひび割れも同じ時期に進むため、トラクターのタイヤ交換時期の見分け方もあわせてご確認ください。
よくある質問(FAQ)
バッテリー液が減っていたら水道水を足してもいい?
バッテリー用の精製水を使ってください。
GSユアサの資料では、メンテナンスのときに精製水を使わなかった場合、不純物(異金属)が混ざって自己放電が大きくなると説明されています。
電池工業会も、液量が上限と下限の間の半分以下に下がっている場合は、上限まで精製水を補充するよう案内しています。
マイナス端子は、どこを外せばいいですか?
バッテリー側の端子部を外します。
井関農機は、マイナス端子を外すときにボディアース部(車体側でケーブルを留めている部分)を外してはいけないと案内しています。
外したあとは、その旨をメモ書きして機械に貼っておくと、次に動かすときに気づけます。
急いでいるとき、急速充電で済ませてもいい?
できるだけ避けてください。
井関農機は、急速充電はバッテリーの寿命を短くするため、できるだけ避けるよう案内しています。
GSユアサも急速充電は最大30分までとしたうえで、液を補充できない密閉型(VRLA)のバッテリーには絶対に行わないよう求めています。
バッテリーはメーカー保証で交換してもらえる?
対象外になるのが一般的です。
三菱マヒンドラ農機のロングライフ保証では、保証期間を新品納入の日から2年間としたうえで、保証対象外の消耗品にバッテリーが明記されています。
条件はメーカーや販売店で異なりますので、購入先にご確認ください。
【まとめ】トラクターのバッテリー上がりで押さえる要点
トラクターのバッテリー上がりは、多くの場合、充電で戻ります。だからこそ、慌てて買い替えを決める前に、順番どおりに切り分けていくことが結局は近道になります。
いちばん大事なのは、ブースターケーブルの4本目です。取扱説明書は、上がった側のマイナスをバッテリーの端子ではなく、バッテリーから離れたエンジン本体につなぐよう指定しています。可燃ガスへの引火を避けるための指定であり、実際に端子の接続で発生したスパークが軽油に燃え移った事故も記録されています。
- ケーブルを出す前に、レバーが中立か・PTOが切かを確かめる
- つなぐ順番は取説の図のとおり。4本目はエンジン本体、外すのは逆順
- 救援車は12Vの車に限る。トラックの24Vは使えない
- 充電で戻るかはインジケータ・電圧・使用年数(2〜3年)で見当がつく
- JAFはトラクターに来ない。窓口はJAの農機センターや農機販売店
- 放置の目安はメーカー基準で1か月前後。冬は端子を外すか補充電を
そして、上がった原因は使い方の悪さとは限りません。稲作の予定と、電気を保てる期間がかみ合っていないだけです。
今年の秋、格納するときに端子を1本外しておく。それだけでも来年の春が変わります。
金額や手順の細かい部分は、機種や地域で変わります。迷ったときは、お使いの機種の取扱説明書と、お近くのJA農機センター・農機販売店にご相談ください。