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20馬力前後のトラクターの点検料を、JAが公開している料金表で並べてみました。16,500円、26,400円、30,800円。同じ「点検」という言葉なのに、金額が倍近く違いました。
さらに読み進めると、いちばん安い16,500円の表には、こう書かれていました。「本表は、点検のみで整備料金は含まれておりません」。
2026年8月時点で、各JAが公開している料金表を実際に取得して確かめた結果です。
つまり金額だけを並べて安い高いを判断すると、比べているものがそもそも違う、ということが起こります。修理費で損をしやすいのは、値切らなかったときではなく、比べる基準を持たないまま話が進んだときです。基準の作り方は農機具のお金で損しないための5つの原則にまとめています。
納屋のトラクターから油がにじんでいる。あるいは、いつもと違う音がする。
農機屋に持ち込む前に、これがいくらぐらいの話なのかを知っておきたい。そう思ってこのページを開いた方が多いと思います。
結論から言うと、トラクターの修理費用は「工賃+部品代+出張料+引取運搬料」の4つで積み上がります。工賃の目安は1時間あたり5,000〜8,800円です。そして今回調べた6件の料金表は、すべて「部品代は含まない」と明記していました。

この記事で分かることは、次の4つです。
- 修理費用の内訳が4つに分かれること。そのうち部品代はどの料金表にも含まれていないこと
- 工賃の時間単価が、JA同士でも1.76倍の開きがあること
- 「点検」と「点検整備」が別物で、金額をそのまま比べてはいけないこと
- 国産トラクターの部品には供給年限があり、12年が1つの目安になること
トラクターの修理費用の相場は、何にいくらかかっているのか
ここからは、見積書が出てくる前に知っておきたいことを、順番に見ていきます。
順番は、工賃の時間単価、見積書の4項目、部位ごとの実額、馬力で変わる点検料。最後に「点検」と「点検整備」の違いを見ます。急いでいる方は、当てはまる見出しから読んでも大丈夫です。
工賃は1時間いくらか|JAの料金表6件で比べた時間単価
結論から言うと、修理の工賃はおおむね1時間あたり5,000〜8,800円です。
というのも、JA(農協)の農機センターは「作業員1人1時間当たり◯◯円」という形で単価を決めているからです。しかも、その表を公開しているところがあります。ここでいう工賃は、技術料や作業料金と呼ばれることもありますが、指しているものは同じです。
実際に6件を並べると、次のようになりました。
| JA(公開料金表) | 工賃の時間単価 | 出張料 |
|---|---|---|
| JAグループ佐賀 | 5,000円(県内平均) | ― |
| JA伊勢 | 6,600円 | 2,200円 |
| JAハイナン農機センター | 6,600円 | 1,650円 |
| JAみなみ魚沼 | 8,800円 | 2,200円 |
| JA兵庫みらい | 7,700円 | 2,200円 |
| JA東美濃 | 8,800円 | 3,300円 |
| 工賃のみで部品代は別途/JA5件の料金表は2026年9月に再確認しています。JAグループ佐賀だけは個別の料金表ではなく「県内平均技術料5,000円/h」として公表されている数字で(2026年8月時点)、税の扱いも明記されていません。他の5件は税込表示です(🟡地域・作業内容で変動) | ||
いちばん低い5,000円と、いちばん高い8,800円。その差は1.76倍です。同じJAという枠の中でも、これだけ開きがあります。
そのため「農協なら安いはずだ」という前提で持ち込むと、想定と違う金額が出てくることがあります。確かに、依頼先の種類で料金が変わるという話はよく聞きます。ただし今回の6件を見るかぎり、依頼先の種類よりも地域による差のほうが大きいのが実情でした。
加えて、時間帯によって割増がつきます。JA伊勢は休日と平日の就業時間外が1時間8,250円。通常の6,600円から上がります。
ちなみにJA東美濃は時間外整備・休日整備が25%増し、JAハイナン農機センターは午後6時以降が30%割増でした。おおむね25〜30%と見ておくとよさそうです。
もう1つ、料金表を読むときに戸惑いやすい言葉があります。「マイナーパーツ」です。
JA兵庫みらいの表では、トラクターの点検整備の基準料金とは別に、マイナーパーツとして3,300円が並んでいました。ガスケットやオイルなど、整備で使う細かい部材をまとめた項目だと読めます。
🟡 金額は地域・機種・年式・状態・作業内容によって変わります。あくまで一般的な目安としてご覧ください。マイナーパーツの中身は表に明記がないため、内訳は依頼先にご確認ください。
見積書に並ぶ4つの項目と、そこに入っていないもの
修理の見積書は、大きく4つの項目で積み上がります。工賃、部品代、出張料、引取運搬料です。
そして、ここがいちばん大事なところです。JAが公開している料金表は「技術料」の表であり、部品代は含まれていません。今回調べた6件すべてに、その旨が書かれていました。
たとえばJA伊勢の表には、こうあります。「本表の料金には、交換部品・オイル・塗料に関する費用は含まれてないので別途料金を申し受けます」。
同じくJA兵庫みらいは「使用した部品代及び油脂代は実費を加算致します」。JAみなみ魚沼も「取付部品・油脂代・塗装代・板金代金は別途請求」と明記していました。
つまり料金表の金額は、修理費の全額ではなく、その一部だということです。
出張料は1,650〜3,300円の範囲でした。JAハイナン農機センターが1,650円。JA伊勢・JAみなみ魚沼・JA兵庫みらいが2,200円で、JA東美濃が3,300円でした。
引取運搬料は、金額そのものより数え方に注意が必要でした。
JA伊勢は軽トラック3,300円・普通トラックやキャリアカーは6,600円からで、管内でない場合は1.5倍。JAみなみ魚沼は片道の金額です。
JA兵庫みらいにいたっては、引取搬送料とは別に、トラクターの引上げ作業が16,200円以上と定められていました。
実際に、同じ「運んでもらう費用」でも、往復か片道か、引き上げ作業が別立てかで、合計は大きく変わります。
ちなみに、料金表に多い「33,000円以上」「16,500円〜」という表記にも意味があります。これは下限を示しているという意味です。標準的な作業で収まればその金額、状態が悪ければ上に伸びる、という書き方になっています。
そのため下限だけを見て予算を組むと、あとで足りなくなります。「この作業は、いくらまで伸びる可能性がありますか」と聞いておくと、見通しが立てやすくなります。
見積を受け取ったら、この4つに分かれているかを確かめてください。
- 工賃(技術料)… 料金表に載っている/1時間5,000〜8,800円
- 部品代・油脂代 … 料金表に載っていない/実費
- 出張料 … 料金表に載っている/1,650〜3,300円
- 引取運搬料 … 料金表に載っている/片道か往復か要確認
🟡 金額は2026年8月時点の公開料金表による目安です。地域・機種・依頼先で変わります。
内訳が分かれていれば、他の見積とそのまま並べて比べられます。
見積の内訳がぴんとこない方は、症状ごとに工賃と出張料がどう積み上がるかを先に見ておくと読みやすくなります。トラクターのエンジンがかからないときの確認手順もあわせてご確認ください。
オイル漏れ・爪交換|公表されている部位別の実額

部位ごとの金額は、公表されているものがごく一部しかありません。
というのも、分解してみないと作業範囲が決まらない修理は、表に載せられないからです。逆に言えば、表に載っている作業は、手間が読める作業だということです。
実際に確認できたのは、次の金額でした。
| 作業の内容 | 公表されている金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 前輪まわりのオイル漏れ | 33,000〜44,000円〜 | 2件で照合 |
| 耕うん爪の交換(1本) | 220〜440円 | 2件で照合 |
| 後輪オイルシール交換 | 88,000円〜 | 🟡1件のみ |
| ロータリーのオイル漏れ | 33,000円以上 | 🟡1件のみ |
| ラジエータ取替 | 22,000円以上 | 🟡1件のみ |
| エンジンオイル交換 | 3,520円〜 | 🟡1件のみ |
| ミッションオイル交換 | 8,800円〜 | 🟡1件のみ |
| エンジンの分解整備(総額) | 公表された相場なし | ― |
| 税込・部品代は別途/出典:JA兵庫みらい・JAみなみ魚沼・JA伊勢・JA東美濃の公開料金表(あくまで目安) | ||
前輪まわりのオイル漏れは、2つのJAの表で33,000円から44,000円という近い数字が出ていました。耕うん爪の交換工賃も2件で1本220〜440円と揃っています。この2つは、比較的信頼して目安にできそうです。
一方で、後輪オイルシール交換の88,000円やラジエータ取替の22,000円は、1件の料金表でしか確認できませんでした。参考程度に見てください。
ここからは、正直にお伝えします。エンジンのオーバーホール(分解して各部を点検・修理する大がかりな整備)。この総額は、メーカーもJAも公表していませんでした。
ミッション修理も同じです。公開されている料金表とメーカーの資料を探した範囲では、根拠のある総額の相場は見つかりませんでした。
見つかった唯一の公的な数字は、JAハイナン農機センターの料金表にある「エンジン脱着 9.3時間 61,380円」です。エンジンを降ろして載せ直すだけで、この金額。
しかもこれは工賃のみで、部品代は含みません(2026年8月11日に取得した料金表によります)。
そのため当サイトでは、根拠のない総額の目安は書きません。分からないものを分かったように書けば、それは読者の判断材料にはならないからです。
充電で戻るかどうかを先に確かめたい方はトラクターのバッテリー上がりの対処を、消耗品の交換にいくらかかるかを先に知っておきたい方は、トラクターのバッテリー交換費用の目安もあわせてご確認ください。
定期点検の基本料金は、馬力でどこまで変わるか
定期点検の基本料金は、馬力の区分で決まります。
作業の手間が機体の大きさに比例するため、どの料金表も馬力で段を分けています。
JA兵庫みらいの表では、20馬力未満が30,800円、20〜29馬力が38,500円。さらに30〜39馬力が46,200円で、40馬力以上は69,300円でした。同じ表の中で、いちばん下といちばん上では2.25倍になります。
JA東美濃は、小型(20馬力未満)が26,400円、中型(20〜30馬力未満)が44,000円。30馬力以上とキャビン仕様は別途とされていました。
JA伊勢は、20馬力以下が16,500円、21馬力以上が16,500〜27,500円、大型特殊が27,500円からです。
| 馬力の区分 | JA伊勢 (点検のみ) |
JA東美濃 (点検整備) |
JA兵庫みらい (点検整備) |
|---|---|---|---|
| 20馬力前後まで | 16,500円 | 26,400円 | 30,800円 |
| 20〜30馬力 | 16,500〜27,500円 | 44,000円 | 38,500円 |
| 30〜40馬力 | 16,500〜27,500円 | 別途 | 46,200円 |
| 40馬力以上 | 27,500円〜 | 別途 | 69,300円 |
| 税込・令和7年4月時点の公開料金表より(🟡馬力の区切り方はJAごとに異なり、JA伊勢は「20馬力以下/21馬力以上/大型特殊」の3区分です) | |||
つまり自分の機体が何馬力かで、出発点が変わります。カタログや型式が分かれば、どの段に当てはまるかは電話でも確認できます。
ちなみにJA伊勢の表には、こんな記載もありました。新車のトラクター・田植機・コンバインは、購入して1年以内の点検料が無料(1回のみ)です。買って間もない機体なら、まず初回点検の扱いを確認しておくとよさそうです。
加えて、知っておきたい区分があります。農耕トラクターは、最高速度35km/h未満なら小型特殊自動車、35km/h以上なら大型特殊自動車にあたります。そして大型特殊自動車は、自動車登録と車検が必要です。
実際に、群馬クボタが定期点検の料金表を公開しています。最高速度35km/h以上のトラクターについて、6か月点検の基本作業が15,000円。12か月点検と24か月点検は、それぞれ30,000円と定められていました。
いずれも2024年8月1日現在の税込金額で、法定費用は別途です。
🟡 この金額は35km/h以上の大型特殊の区分のものです。一般的な小型特殊のトラクターとは料金体系が異なるため、同じ土俵で比べないようご注意ください。
同じ3文字でも中身が違う|点検と点検整備の境目

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。結論から言うと、「点検」と「点検整備」は別物です。
JA伊勢の20馬力以下16,500円と、JA兵庫みらいの20馬力未満30,800円。この2つは、そもそも含んでいる作業が違います。
点検整備に含まれるオイル交換がいくらになるかを先に知っておきたい方は、トラクターのオイル交換費用の内訳もあわせてご確認ください。
JA伊勢の料金表には、注記としてこう書かれています。「本表は、点検(機種別チェックシートによる)のみで整備料金は含まれておりません」。つまりチェックシートに沿って見て回るところまでが16,500円で、そこで見つかった不具合を直す費用は別、ということです。
一方、JA兵庫みらいの表題は「農業機械点検整備料金表」です。JA東美濃も同じく整備を含む表です。こちらには「点検整備での部品交換、または特別の整備がある場合は、別途追加として工賃及び部品代をいただきます」とあります。
メーカー系ディーラーの表にも、同じ考え方が出てきます。群馬クボタの料金表にも、はっきり書かれています。「表示料金は、点検に伴う簡単な締付作業等の料金は含まれていますが、点検の結果生ずる整備の料金は含んでおりません」。
そして、もう1つ知っておきたい注記があります。
JA東美濃の料金表には「修理不可の場合でも整備料金を請求させていただく場合がございます」と明記されています。
つまり、直らなかったときでも、見た分の費用はかかることがあるということです。持ち込む前に「直せなかった場合はどうなりますか」と一言確認しておくと、あとで驚かずに済みます。
実際の表を確かめたい方は、JA伊勢「令和7年 農業機械点検整備/修理料金表」で注記まで読むことができます。
トラクターの修理費用の相場が分かったら、どこに頼み、いつ手放すか
ここからは、金額の目安が分かったあとの判断について見ていきます。
順番は、依頼先による料金の出方の違い、修理費が上がっている理由、直すか買い替えるかの線引き。最後に、自分で触れる範囲を見ます。
JA・メーカー系ディーラー・農機店|料金の出方が違う

依頼先による違いは、金額の高い安いよりも、見積の出方の構造にあらわれます。
JAは、作業別の項目と時間単価で組み立てます。これまで見てきたとおりです。
一方、メーカー系ディーラーにはコース制をとっているところがあります。実際に、関東甲信クボタが公開している点検整備の料金表は、Aコース・Bコース・Cコースの3段階に分かれていました。Cコースは清掃と調整・洗車・注油のみ、Bコースは標準点検整備、Aコースはそこに塗装を加えた内容です。
ただし、こちらは税抜表示でした。同じ表には「上記料金表は作業技術料金です、交換部品・オイル代等は別途申し受けいたします」とも書かれています。税込と税抜が混ざると比較を誤るので、ここは必ず確認してください。
加えて、群馬クボタの表にはこんな注記もありました。「クボタ製以外の自動車については、交換部品の入手が困難であることなどにより点検・整備をお受けできない場合があります」。メーカー系ディーラーは自社製品に強い一方で、他社製品は受けられない場合があるということです。
では、地元の農機店はどうでしょうか。
ここも正直にお伝えします。比較できる形で料金表を公開している店は、ほとんど見つけられませんでした。
そのため当サイトでは「民間の農機店は安い」とは書きません。裏づけとなる公開情報が存在しないからです。
とはいえ、これは悪い話ばかりではありません。公開されている料金表は、JAとディーラーに集まっています。つまり、その表を持って地元の農機店に相談すれば、話の土台を揃えられるということです。
具体的には、依頼先に関係なく次の3点を同じ形で聞いてみてください。時間単価はいくらか、出張料と引取運搬料は片道か往復か、そして部品代は見積のどこに入っているか。この3つが揃えば、金額の大小ではなく中身で比べられます。
反対に、総額だけが1行で書かれた見積は、比べようがありません。金額に納得できないというより、比較の材料が足りていない状態です。内訳を出してもらうこと自体は、失礼な依頼ではありません。
部品が出なくなる12年目|修理代の話が終わるとき

修理代の話には、金額とは別に、年数の問題があります。修理費がいくらかという以前に、そもそも部品が手に入るかどうかという期限があるためです。
農業機械の補修用部品には供給年限があります。経済産業省の指導のもと、日本農業機械工業会が機種別に定めているものです。製造打ち切り後の年数として、次のように決まっています。
| 機種 | 製造打ち切り後の供給年限 |
|---|---|
| トラクタ(国産)、乾燥機(個人用) | 12年 |
| エンジン(単体)、脱こく機、籾すり機、米選機、精米機(個人用) | 10年 |
| 耕うん機、田植機、コンバイン、バインダ、動力噴霧機、動力散布機、運搬車、除雪機 | 9年 |
| 刈払機 | 8年 |
| 経済産業省の指導のもと日本農業機械工業会が制定(出典:ヤンマー公式)/🟡年限後も共用部品は入手できる場合があります | |
年限を過ぎると、他の機種と共用している部品を除いて、順次在庫限りの販売に移り、その後は販売終了になります。
ただし、ここは断定できません。というのも、クボタがこう説明しているからです。
「ガイドラインで指定された供給年限を経過した時点で、全ての部品が一律に在庫切れになるということではありません」。もちろん他の機種に流用している部品や消耗品は、引き続き手に入る場合があるとされています。
そのため12年を超えた機体では、修理費がいくらかを聞く前に「その部品は出ますか」を先に確認してください。金額の話が、直せるかどうかの話に変わる場面があります。詳しい年限はヤンマー公式「古い機械ですが部品はまだ買えますか?」で確認できます。
直すか、買い替えるか|7年と20万円という2つの線引き

直すか手放すかは、感覚ではなく、2つの数字を材料にできます。
1つは法定耐用年数。もう1つは、その修理代が税務上どう扱われるかです。
国税庁の耐用年数表では、別表第2の番号25「農業用設備」の耐用年数が7年と定められています。平成21年分から、農業機械は機種を問わず一律7年になりました。それ以前は乗用トラクタが8年、歩行型が5年というように機種ごとに分かれていたものが、まとめられた形です。
もう1つが、修繕費として扱えるかどうかの線引きです。国税庁は、おおむね3年以内の周期で行う修理・改良を修繕費として扱えるとしています。1回の修理・改良が20万円未満の場合も同じです。
資本的支出(資産の価値を高める支出)か修繕費か、区分がはっきりしない場合の基準もあります。その金額が60万円未満のときは、修繕費として扱えるとされています。前年末の取得価額のおおむね10%相当額以下のときも同じです。
🟡 実際の判定は取得価額や償却の状況で変わります。個別の判断は、税務署または税理士にご確認ください。
そしてもう1つ、見落とされやすい視点があります。
農林水産省が示している農機具費の計算式は、次のとおりです。農機具費={購入価格+メンテナンス費用-中古農機の売価}÷稼動年数÷利用面積。
国の計算式の中に、中古農機の売価が引き算として入っています。つまり修理にいくらかけたかと、手放すときにいくらになったかは、同じ式の中にある数字だということです。
加えて、置いたままにすると止まらない費用もあります。小型特殊自動車は、所有しているだけで軽自動車税(種別割)の対象になります。年税額は自治体によって2,000〜2,400円ほどです。
しかも毎年4月1日時点の所有者に課税されます。使っていなくても、廃車の申告とナンバー返納まで終えないと止まりません。
直さずに手放すと決めた方は、トラクターの廃車手続きで必要な書類もあわせてご確認ください。
また、農業用機械は市区町村が収集・処理しないと案内している自治体があります。処分に回す場合も、原則として費用がかかると考えておいたほうが安全です。
修理代が機械の価値を超えそうで迷っている方は、動かないトラクターの買取相場の目安もあわせてご確認ください。
自分で触れる範囲の境界線と、修理費を抑える現実的な順番

修理費を抑える方法の1番目は、値切ることではありません。定期点検です。
というのも、井関農機「トラクタ 点検整備ポイント」に、こう明記されているからです。「きちんと点検・整備をすることにより、安心してご使用いただくことはもちろん、時期中のトラブルや高額な修理代の発生を減らすことができます」。メーカー自身が、点検と修理費の関係をはっきり書いている数少ない記述です。
具体的な周期も公開されています。アワーメーター(稼働時間を示す計器)の数字が目安になります。
| 部品 | 交換・清掃の目安 |
|---|---|
| エンジンオイル | 100時間ごと |
| エンジンオイルフィルタ | 200時間ごと |
| チェンジミッションオイル | 初期点検後200時間ごと |
| 燃料フィルタ | 清掃100時間・交換400時間 |
| エアクリーナエレメント | 600時間または1年に1回 |
| 冷却水 | 600時間または2年に1回 |
| 出典:井関農機「トラクタ 点検整備ポイント」(🟡搭載エンジン・型式により異なります。お使いの機種の取扱説明書をご確認ください) | |
次に、自分で触れる範囲についてです。ここにはメーカーが引いた明確な線があります。
クボタの取扱説明書によると、ヒューズは切れたものと同じ容量のものに自分で交換できます。ただし交換してもすぐ切れる場合は、針金や銀紙で代用せず購入先で点検・修理を受けるよう書かれています。
また、スローブローヒューズという太いヒューズがあります。大きな電流を守るネジ止めタイプで、この点検・交換は必ず購入先で行うよう求められています。
本機の配線も、むやみに修理せず購入先へ依頼することとされています。というのも、端子や接続部のゆるみ・損傷がショートや漏電を招き、火災事故になるおそれがあるためです。
反対に、やってはいけないことも決まっています。スタータ端子や安全スイッチを直結して始動することは、クボタが明確に禁止しています。トラクタが突然動き出すおそれがあるためです。
セルを回すときも、連続10秒で始動しなければ30秒休む、と取扱説明書に書かれています。回し続けると、原因が別の場所にあってもバッテリーとセルモーターを先に傷めます。
最後に、費用面で現実的にできることを3つ挙げます。
- 繁忙期を外して依頼する(時間外や休日にかからない時期を選ぶ)
- 時間外や休日を避ける(25〜30%の割増がつきます)
- 自力で持ち込む(出張料と引取運搬料が要らなくなります)
自分でどこまで触っていいか迷っている方は、トラクターのセルモーター直結が禁止されている理由もあわせてご確認ください。
よくある質問(FAQ)
バッテリー交換のような短い作業でも、工賃はかかりますか?
かかります。工賃は作業ごとの標準時間で決まるためです。JAハイナン農機センターの料金表では、バッテリー交換と充電がそれぞれ0.3時間で1,980円、スターター仕組交換が0.5時間で3,300円でした(2026年8月11日に取得した料金表によります)。いずれも工賃のみで部品代は別途です。地域と機種で変わるため、あくまで目安としてご覧ください。
車検が必要なトラクターは、点検料のほかに何がかかりますか?
印紙代、自動車重量税、自賠責保険料、車検代行手数料などが別途かかります。ただし大型特殊自動車の重量税は非課税とされています。群馬クボタの料金表にも「法定費用は別途」と明記されていました。実際の金額は依頼先にご確認ください。
修理をやめて処分する場合、粗大ごみに出せますか?
出せない場合が多いです。つくば市は「市では収集・処理しないもの」に農業用機械類を挙げています。そのうえで、販売店で引き取ってもらうか廃棄物処理業者に委託するよう案内しています。自治体によって扱いが異なるため、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
修理代が20万円を超えると、その年の経費にはできませんか?
必ずしもそうではありません。国税庁は、資本的支出か修繕費かがはっきりしない場合の基準も示しています。その金額が60万円未満のとき、または前年末の取得価額のおおむね10%相当額以下のときは、修繕費として扱えるとされています。判断は個別の事情で変わるため、税務署または税理士にご確認ください。
【まとめ】トラクターの修理費用の相場で押さえる5つの要点
トラクターの修理費用の相場を調べていた方にお伝えしたかったのは、1つです。相場は1つの数字ではなく、内訳と条件で決まります。
内訳を分けて見られるようになれば、目の前の見積が妥当かどうかは、自分で判断できるようになります。
- 修理費は「工賃+部品代+出張料+引取運搬料」の4つ。料金表の金額に部品代は入っていない
- 工賃の時間単価は1時間5,000〜8,800円(税込)。JA同士でも1.76倍の差があり、地域差のほうが大きい
- 「点検」と「点検整備」は別物。16,500円と30,800円を並べて安い高いを言わない
- 部位別で公表されている数字はごく一部。エンジンの総額など、公表された相場が存在しない作業もある
- 国産トラクターの部品供給年限は製造打ち切り後12年が目安。年数が経った機体は、金額より先に部品の在庫を聞く
金額はいずれも、機種・年式・稼働時間・状態・地域・時期・依頼先によって変わります。あくまで一般的な目安としてご覧ください。正確な金額はJAや農機販売店の見積もりで、税務の扱いは税務署または税理士にご確認ください。
急いで決める必要はありません。内訳を分けて出してもらい、馬力の区分を確かめ、部品が出るかを聞く。ここまで揃えてから、直すか手放すかを決めれば十分です。