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クボタのトラクター取扱説明書には、目的から引ける索引が付いています。そこで「スタータモータが回らない」を引いてみました。
飛ばされる先は、部品の故障を説明したページではありません。「エンジンの始動と停止」という、運転操作の章でした。
クボタが公開している取扱説明書で確認できます(2026年8月時点)。
つまりメーカーは、セルが回らないという症状の入口を、部品の故障ではなく始動のしかたに置いているということです。ここを知らないまま部品を疑うと、遠回りになります。
明日は代掻きに入りたいのに、キーを回してもセルが回らない。調べると「直結すればかかる」と書かれた投稿が出てくる。その手順を探して、このページを開いた方が多いと思います。
結論から言うと、直結はクボタの取扱説明書が明確に禁止している行為です。トラクタが突然動き出すおそれがある、というのがその理由です。そして直結で確かめようとしていることの多くは、直結しなくても4か所を順に見れば絞り込めます。
この記事で分かることは、次の4つです。
- 直結が、クボタの取扱説明書で禁止されている行為だということ
- セルが回らない原因が、音の出方で3つに分かれること
- 直結せずに確かめられる4か所(安全スイッチ・端子・アース・ヒューズ)
- 農機店に頼んだときの工賃の目安(JAが公開している料金表から)
トラクターのセルモーター直結方法の前に、原因はどこまで絞れるか
ここからは、直結に手を伸ばす前に見ておきたい場所を、順番に見ていきます。
具体的には、直結という言葉の意味、セルの音、レバーとPTO、バッテリー端子とアース、電圧の見方、ヒューズの順です。急いでいる方は、当てはまる見出しから読んでも大丈夫です。
そもそも直結とは、セルモーターのどこを繋ぐ行為なのか

結論から言うと、直結とは、キースイッチと安全スイッチを通さずに、バッテリーの電気をセルモーターへ直接送る操作のことです。
というのも、セルモーター(エンジンを回し始めるための電動モーター)には、マグネットスイッチが付いているからです。電磁石で動く、大きな電流を扱うためのスイッチです。
このマグネットスイッチは、2つの仕事を同時にしています。1つは、モーターに大電流を流すこと。もう1つは、ピニオンギヤ(モーター側の小さな歯車)を飛び出させて、エンジン側の歯車に噛み合わせることです。
そして、ここには3種類の端子があります。バッテリーからの太い線がつながるB端子、キースイッチからの細い信号線が来るS端子、そしてモーター側へ向かうM端子です。
🟡M端子は、C端子と呼ぶ場合もあります。
一般に直結と呼ばれているのは、このうちキースイッチから来る信号の経路を飛ばして、電気を直接送る操作を指します。
確かに、図で見ると配線を1本つなぐだけの単純な作業に見えます。ただし飛ばしているのは、単なる配線ではありません。飛ばしているのは、エンジンをかけてよいかどうかを判断している仕組みのほうです。
つまり直結は、電気の近道であると同時に、安全装置を通らない近道でもあるということです。
なお、この記事では、どの端子をどうつなぐかという具体的な手順は書きません。その理由は、記事の後半でメーカーの記載とあわせて説明します。
音で分かれる3つの道|無反応・カチカチ・重く回る
キーを回したときの音で、疑う先が3つに分かれます。
カチカチという音は、先ほどのマグネットスイッチが動いた音です。つまり、キーからの信号はそこまで届いているということになります。
信号が届いているのに回らないのは、モーターを回し続けるだけの電流が保てていない状態です。反対に、まったくの無反応なら、信号そのものが手前で止まっている可能性が高くなります。
具体的には、次の3つに分けて考えると、次に見る場所が決まります。
まず、まったくの無反応。安全スイッチやヒューズなど、電気が届く前の経路を疑います。
次に、カチカチと鳴るだけの場合。端子のゆるみや腐食、アース(車体側へ電気を戻す経路)の不良でも同じ音になります。
そして、重く回るけれど始動まで至らない場合。クボタの診断表では「バッテリがあがり気味で、回転力が弱くなって圧縮を越す勢いがない」状態が挙げられていました。
| キーを回したときの様子 | 考えられること | 先に見る場所 |
|---|---|---|
| まったく反応がない | 電気がセルモーターまで届いていない可能性 | レバー中立とPTO切り・ヒューズ |
| カチカチと鳴るだけ | 信号は届いているが電流が足りていない(🟡音だけでは決まりません) | 充電の状態・端子・アース |
| 重く回るが始動しない | バッテリがあがり気味で回転力が弱い状態(クボタ取説の診断表) | 補充電してから、もう一度確かめる |
確かに、カチカチと聞こえるとバッテリー上がりだと決めつけたくなります。ただし、バッテリーが新品でも、端子とアースの状態次第で同じ音になります(🟡音だけで原因は決まりません。次の見出し以降の確認とセットで判断してください)。
ここで気をつけたいのが、かかるまで回し続けてしまうことです。
セルを回してよい時間は決まっています
クボタのトラクター取扱説明書には、次のように記載されています。スタータを連続10秒間回しても始動しない場合は30秒間休み、その操作を再度1〜2回繰り返す。回し続けても、原因が別の場所にあればバッテリーとセルモーターのほうが先に傷みます。
そのため、最初の数十秒は音を聞き分けることに使ってください。ここを飛ばすと、必要のない部品を買いに走ることになります。
キーを入にしたときにメーターのランプが点くかどうかも、電気が届いているかの手がかりになります。ランプの色や種類の見方は、トラクターの警告灯の見分け方と対処で整理しています。
同じことが田植え機でも起きている方は、田植え機のエンジンがかからないときの原因もあわせてご確認ください。
レバー中立とPTO切り|故障ではなく安全装置で止まっている場合

音を聞いたら、次はレバーの位置を確かめてください。
というのも、乗用トラクターには始動安全装置が付いているからです。動力の伝達が切れていない状態では、そもそもエンジンが始動しない仕組みになっています。
実際に、クボタのトラクター取扱説明書にはこう書かれています。シャトルレバーを中立にし、あんしんPTOスイッチを切にしないと、安全スイッチが作動してエンジンは始動しない。
三菱マヒンドラ農機の取扱説明書にも、同じ趣旨の記載があります。シャトルレバーとPTO変速レバーを中立にしないと始動できない、という内容です。
つまり、メーカー2社が同じことを書いているということです。冒頭で触れた索引の話も、ここにつながります。
確かめる順番は簡単です。まずキースイッチを切り、平らな場所であることを確かめます。
次に変速レバー類をすべて中立に戻し、PTOのスイッチを切にします。そのうえで駐車ブレーキを掛け、シートに座ってから、もう一度キーを回します。
これで動けば、部品はどこも壊れていなかったことになります。
ちなみに、安全スイッチは長く使っていると位置がずれたり、接点の当たりが悪くなったりすることがあります。レバーを一度大きく動かしてから中立に戻す、クラッチペダルを踏み直す。こうした動作で反応が変わる場合もあります。
🟡スイッチの位置や数は機種によって異なります。お使いの機種の取扱説明書でご確認ください。
始動安全装置がどんな事故を防ぐために付いているかは、農作業安全情報センターの始動安全装置の説明で公開されています。
バッテリー端子とアース|工具なしで見える2か所

バッテリー本体が生きていても、端子とアースで電気が届かないことがあります。
というのも、セルを回す瞬間には非常に大きな電流が流れるからです。わずかな接触抵抗があるだけで、モーターまで届く電流が落ちてしまいます。
具体的に見るのは2か所です。1つは、バッテリーの端子。白い粉のような付着物がないか、締め付けが緩んでいないかを確かめます。
もう1つは、アース線が車体に取り付けられている部分です。ここが錆びていたり緩んでいたりすると、電気の戻り道が細くなります。
加えて、バッテリーの上面にインジケータが付いている機種なら、そこも判断材料になります。クボタの取扱説明書では、緑は良好、黒は要充電、白は交換が必要、という3段階で説明されていました。黒の場合の補充電の電流は、6〜7アンペアが目安として示されています。
ただし、ここで先に押さえておきたい手順があります。
バッテリーの点検や取り外しをするときは、エンジンを必ず停止し、キースイッチを切の位置にしておく。取り外すときは、短絡(ショート)を防ぐために最初にマイナス側のコードを外し、つなぐときは最後にマイナス側をつなぐ。これらはいずれも、クボタの取扱説明書に明記されている手順です。
ついでに見ておきたいのが、周りの汚れです。クボタの取扱説明書は、バッテリや電気配線の周辺部にワラくず・ごみ・燃料が付着すると火災の原因になると注意しています。
🟡アース線の取り付け位置は機種によって異なります。取扱説明書でご確認ください。
つまり、ここまでは特別な工具がなくても目で見て確かめられる範囲だということです。
端子を磨いてもセルの反応が変わらない方は、トラクターのバッテリー上がりの原因と対処もあわせてご確認ください。
電圧は「止まっているとき」ではなく「回した瞬間」を見る
電圧の読み方そのものは、トラクターのバッテリーは何ボルト?本数で分かる12Vと24Vで整理しています。
結論から言うと、テスターの数字は、止まっているときの値だけで判断しないでください。
セルモーターを回しているのは、電圧ではなく電流です。数字の上では足りているように見えても、大電流を流した瞬間に電圧が落ちてしまえば、モーターは回りません。
実際に、クボタの取扱説明書の診断表を見てみます。始動困難の原因は「バッテリがあがり気味で、回転力が弱くなって圧縮を越す勢いがない」と表現されていました。完全に空ではなく、弱っている状態を指した書き方です。
また、止まっているときに12.5ボルト出ていても、回した瞬間に9ボルト台まで落ちて回らなかった、という報告も見られます。
🟡個別の測定例であり、すべての機械に当てはまる数値ではありません。
確かに、テスターがあれば原因が分かりそうな気がします。ただし電圧だけの測定は、あくまで簡易的な確認にとどまります。正確な診断には電流の測定が必要だと、整備の現場では説明されています。
そのため、迷ったときは、まず充電してから同じ操作をやり直すのが近道です。充電で反応が変わればバッテリー側、変わらなければ別の場所、という分け方ができます。
もし、新品のバッテリーに交換したのにセルが回らないのであれば、前の見出しに戻ってください。バッテリーそのものではなく、端子・アース・安全スイッチのどれかで電気が止まっている可能性が残ります。
逆に言えば、部品を新しくしても症状が変わらないときこそ、直結ではなく確認の順番を疑うべき場面です。
まず充電してから確かめ直したい方は、トラクターのバッテリー充電時間の目安もあわせてご確認ください。
ヒューズとスローブローヒューズ|自分で触れる範囲の境界線

ヒューズは自分で交換できます。ただし、スローブローヒューズは別扱いです。
というのも、スローブローヒューズは配線全体を守るための大容量の部品だからです。クボタの機種では60アンペアや80アンペアのものが使われています。
ここが切れているということは、その先で大きな異常が起きたという合図でもあります。だからこそ、クボタの取扱説明書には、スローブローヒューズの点検と交換は必ず購入先で行なうように、と書かれています。
配線をむやみに触らないほうがよい理由
クボタの取扱説明書には、配線の端子や接続部のゆるみや損傷について注意書きがあります。電気部品の性能を損なうだけでなく、ショートや漏電の原因となり、火災事故になるおそれがあるためです。防水性などを考慮して配線されているため、むやみに修理して使わないようにとも記載されています。
整理すると、次のようになります。
| 部品・状況 | 自分でできるか | クボタ取扱説明書の記載 |
|---|---|---|
| ヒューズの交換 | できる | 切れたものと同容量のヒューズと交換する |
| 交換してもすぐ切れる | できない | 針金や銀紙などで代用せず、購入先で点検・修理 |
| スローブローヒューズ(60A・80A) | できない | 点検・交換は必ず購入先で行なう |
| 配線そのものの修理 | できない | むやみに修理せず、購入先に点検・整備を依頼 |
つまり、ここが「自分で見る」の終点です。ヒューズを1本替えて直るなら自分の作業、そこから先の配線に手を入れる話になったら農機店の作業、という線引きになります。
ちなみに、ヒューズボックスの位置は機種によって違います。運転席の足元やボンネット内などです(🟡取扱説明書でご確認ください)。
トラクターのセルモーター直結方法を、メーカーが禁止している理由
ここからは、直結という方法そのものについて見ていきます。
具体的には、メーカーの記載、外れてしまう仕組み、実際の事故の型、混同されやすい2つの作業、費用の順です。
クボタの取扱説明書は「直結して始動しないこと」と書いている
結論から言うと、直結が危ないというのは、インターネット上の意見ではありません。メーカーが取扱説明書に書いていることです。
クボタのトラクター取扱説明書の安全に関するページに、次の記載があります。
地上に立ってエンジンを始動したり,スタータ端子や安全スイッチを直結してエンジンを始動しないでください。トラクタが突然動き出すおそれがあります。
クボタ トラクタ取扱説明書より引用
この一文は、同じ取扱説明書の中に2か所出てきます。冒頭の安全ページと、運転のしかたを説明する章の両方です。
さらに、公開されている取扱説明書のうち、シリーズの異なる2冊に同じ文言が載っていました。特定の機種だけの注意書きではない、ということになります。
ここでもう1つ見ておきたいのが、同じ文の前半です。禁止されているのは直結だけではありません。「地上に立ってエンジンを始動したり」という部分も、同じ一文に含まれています。
実際に、直前の項目には別の指示があります。エンジンを始動する前に、必ずシートに座ること。そのうえで、レバー類が中立か、PTOスイッチが切か、駐車ブレーキが掛かっているかを確かめること、という内容です。
メーカーは、運転席に座った状態で始動することを前提に機械を設計しています。直結が問題になるのは、この前提から外れてしまうからです。
確かに、実際に直結でエンジンをかけている人はいます。それでも、メーカーが手順として認めていない以上、「うまくやれば大丈夫な作業」とは言えません。
つまり直結は、腕の問題ではなく、そもそも前提が違う操作だということです。だからこそ、この記事では手順を書いていません。
お使いの機種の記載は、クボタの取扱説明書検索から型式で探せます。
直結で外れるのは「始動安全装置」という仕組み

直結でショートカットされるのは、事故を防ぐために付けられた装置そのものです。
というのも、農研機構の農作業安全情報センターが、始動安全装置の目的をはっきり示しているからです。始動する際に走行部や作業機が作動してしまうと、事故につながる危険性があると説明されています。挟まれ、ひかれ、巻き込まれといった事故です。
だからこそ、動力の伝達が切れていなければエンジンが始動しない仕組みになっているわけです。乗用トラクターの場合は、クラッチが切れていること、変速レバーが中立であることが条件になります。
実際に、同センターが公開している事故事例には、次のようなものがあります。クラッチを踏んでエンジンをかけたが、ギヤが入っていたために急発進して振り落とされた、という事例です。座席に座らずに始動したことが背景にありました。
この事例は直結によるものではありません。ただし、ギヤが入ったまま始動すると何が起きるかを示した記録として読むことができます。
同センターの事故事例には、もう1つ参考になるものがあります。ロータリーを上げてエンジンを切り、トラクターから降りたときのことです。機械が自然に後方へ動き出し、着ていたカッパが前輪に引っかかって左足をひかれ、複雑骨折に至っています。
こちらもエンジンを止めた後の事故であり、直結とは関係がありません。それでも、機械の外に立っている人と動き出した車体の距離がどれだけ近いかは、この記録からよく分かります。
ちなみに、始動安全装置は単独で付いているものではありません。同センターは、PTO軸の防護や転倒警報装置などと並ぶ、機種共通の安全装備の1つとして挙げています。
そして直結の場合は、この状況に条件がもう1つ加わります。作業をしている人が、運転席ではなく機械の外に立っているということです。
つまり、動き出したときに操作できる場所にいない、という点が直結のいちばん怖いところになります。
数字で見る、トラクターで実際に起きている事故の型
結論から言うと、始動安全装置が防ごうとしている事故は、統計の上でも小さな数字ではありません。
農林水産省が公表している「令和6年の農作業死亡事故について」に、機種別と原因別の内訳が載っています(令和6年の農作業死亡事故について|農林水産省)。
令和6年の農作業事故による死亡者数は287人でした。このうち農業機械作業に関わる事故が156人で、全体の54.4パーセントを占めています。
機種別では、乗用型トラクターによる事故が53人と最も多く、農業機械の事故全体の34.0パーセントにあたります。
その53人の内訳で最も多いのは、機械の転落・転倒で38人です。一方、巻き込まれ・挟まれ・ひかれの3つを合わせると13人になります。
乗用型トラクターの死亡事故のうち、24.5パーセントを占める数字です。
| 事故の原因(令和6年・乗用型トラクター) | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 機械の転落・転倒 | 38人 | 71.7% |
| 回転部等への巻き込まれ | 8人 | 15.1% |
| 挟まれ | 3人 | 5.7% |
| ひかれ | 2人 | 3.8% |
| 機械からの転落 | 1人 | 1.9% |
| 道路上での自動車との衝突 | 1人 | 1.9% |
| 合計 | 53人 | 100.0% |
出典:農林水産省「令和6年の農作業死亡事故について」(2026年2月公表)。オレンジの3行が、始動安全装置の防ごうとしている事故の型です(🟡始動時の事故に限った内訳ではありません)。
ここで注意していただきたい点があります。この統計は、エンジンを始動したときの事故だけを抜き出した内訳ではありません。作業中や移動中の事故も含まれています。
つまり「13人が直結で亡くなった」という意味ではありません。挟まれ、ひかれ、巻き込まれという事故の型が、実際に毎年起きているという事実を示す数字です。そして、その型こそが始動安全装置の防ごうとしているものです。
機体から降ろした単体テストと、載せたままの直結は別物
直結という言葉で語られている作業には、性質の違う2つが混ざっています。
というのも、危険の正体は「トラクターが動き出すこと」だからです。そうであれば、機械に載ったままなのか、部品を降ろした状態なのかで、話がまったく変わってきます。
1つ目は、機体に載せたまま、エンジンを始動する目的で直結する作業です。これはクボタの取扱説明書がはっきり禁止しています。走行系がつながっていれば、機械はそのまま動き出します。
2つ目は、セルモーターを機体から取り外し、単体で通電するかどうかを確かめる作業です。こちらは部品が単独で置かれているため、機械が走り出すことはありません。
| 比べる点 | 機体に載せたまま直結する | 機体から降ろして単体で確かめる |
|---|---|---|
| 目的 | エンジンを始動させる | セルモーターが回るかを確かめる |
| 機械が動き出すか | 走行系がつながっていれば動き出す | 部品単独のため動き出さない |
| メーカーの記載 | クボタの取扱説明書が禁止 | 一般向けの手順は確認できず(🟡2026年8月時点の調査範囲) |
| この記事の扱い | 手順は書きません | 手順は書きません |
ただし、2つ目についても、この記事では手順を書きません。理由は2つあります。
まず、メーカーが一般の使用者向けに手順を公開している一次情報を見つけられなかったためです。公開されている範囲で確認できなかった、という意味です(🟡2026年8月時点)。
次に、取り外す工程そのものが、大電流の配線を外す作業を含むためです。ここまで来た時点で、農機店に見てもらったほうが結果的に早い場合が多くなります。
インターネット上の直結の解説は、二輪車や乗用車を対象にしたものが目立ちました。それらの機械には、トラクターのような始動安全装置と作業機が付いていないため、前提が異なります。
つまり、同じ「直結」という言葉でも、対象がトラクターかどうかで危険度がまるで違うということです。
農機店に頼むといくらか|JAの料金表で見る工賃と部品代

結論から言うと、呼ぶ前に金額の見当はつきます。JAが料金表を公開しているからです。
農機センターの多くが、標準的な作業時間と料金を一覧にしているためです。ここではJAハイナン農機センターとJA伊勢の料金表を参照しました。
ここで先に押さえておきたいのが、料金表に載っているのは工賃だけだという点です。交換部品やオイルの代金は含まれていません。この点は、2件の料金表の両方に明記されていました。
具体的な金額を見ていきます。作業員1人1時間あたりの工賃は、両方のJAで6,600円(税込)でした。
そのうえで注目したいのが、スターター仕組交換の標準時間です。JAハイナン農機センターの料金表では0.5時間、金額は3,300円と設定されていました。
一方、部品代は別に見積もる必要があります。セルモーターのリビルト品(分解・整備して再生した部品)は、おおむね2万円台から6万円台で取引されていました。
🟡2026年8月時点で確認した販売例です。機種・型式や、古い部品の返却が必要かどうかで変わります。
| 項目 | 金額の目安(税込) | 出典 |
|---|---|---|
| 作業員1人1時間あたりの工賃 | 6,600円 | JAハイナン・JA伊勢の2件で一致 |
| スターター仕組交換(30馬力クラス以下) | 0.5時間・3,300円 | JAハイナン(🟡1件のみ) |
| バッテリー交換/バッテリー充電 | 各0.3時間・1,980円 | JAハイナン(🟡1件のみ) |
| 出張料 | 1,650円〜2,200円 | JAハイナン1,650円/JA伊勢2,200円 |
| 時間外の割増 | 午後6時以降30%増/休日・就業時間外は1時間8,250円 | JAハイナン/JA伊勢 |
| セルモーター本体(リビルト品) | おおむね2万円台〜6万円台(🟡部品代は工賃と別途) | 販売店・落札データ(2026年8月時点) |
上の金額はいずれも工賃のみで、部品代・加工代は含まれていません。地域のJAや依頼先によって異なるため、あくまで目安としてご覧ください。
つまり、工賃と出張料だけなら数千円台です。部品交換まで進むと、総額が一段変わります。
依頼先による料金の出方の違いや、部位別に公表されている金額は、トラクターの修理費用の相場で比べています。
依頼先は、JAの農機センター、メーカーの販売店、民間の整備工場が主な選択肢になります。ここでは順位は付けません。料金表を公開しているのはJAの一部であり、他は見積もりを取らないと分からないためです。
そのうえで、修理費が高くなりそうなときは、いま手放した場合の金額と並べて考える方法もあります。修理見積もりと売却時の金額を両方そろえてから決めれば、あとから迷いにくくなります。
修理にかけるか、手放すかで迷っている方は、トラクターのバッテリー交換の判断と費用の目安もあわせてご確認ください。
よくある質問(FAQ)
セルモーターの交換は自分でできますか?
農機販売店やJAへの依頼をおすすめします。クボタの取扱説明書が、配線はむやみに修理せず購入先へ点検・整備を依頼するよう求めているためです。JAハイナン農機センターの料金表では、スターター仕組交換の工賃が0.5時間・3,300円(税込・工賃のみで部品代は別途)となっています。
バッテリーの充電は載せたままでもいいですか?
充電の前に、エンジンを停止してキースイッチを切にしてください。取り外す場合はマイナス側から外します。充電中は水素ガスが出るため、通気の良い場所で火気を避けます。液口栓のあるタイプは、栓を外してから充電してください。
充電してもすぐ上がるのはセルモーターが原因ですか?
先にバッテリー側を疑ってください。充電不足のまま放置すると、極板に硫酸鉛の結晶が残るサルフェーションが進みます。この状態になると充電しても回復せず、その後の長期間の使用は期待できないと説明されています。
農機店に連絡するとき何を伝えるとよいですか?
次の4つを伝えると話が早く進みます。
- キーを回したときの音(無反応・カチカチ・重く回る)
- レバーを中立、PTOを切にして試したか
- バッテリーを充電したかどうか
- 機種名と型式
JAの料金表は機種の区分ごとに分かれているため、型式が分かると見積もりも出やすくなります。
【まとめ】トラクターのセルモーター直結方法で押さえる要点
トラクターのセルモーター直結方法を探していた方にお伝えしたかったのは、1つです。直結で確かめようとしていることの多くは、直結しなくても分かります。
順番に見ていけば、部品を疑う前に終わる場合もあります。
- 直結は、クボタの取扱説明書が禁止している操作。理由はトラクタが突然動き出すおそれがあるため
- セルが回らない原因は、無反応・カチカチ・重く回るの3つで見る場所が変わる
- 直結せずに確かめられるのは、レバー中立とPTO切り・バッテリー端子・アース・ヒューズの4か所
- スローブローヒューズと配線の修理は、メーカーが購入先に依頼するよう求めている境界線
- スターター仕組交換の工賃は0.5時間で3,300円(JAハイナン農機センターの料金表・工賃のみで部品代は別途・地域により異なる)
金額はいずれも、機種・年式・状態・地域・依頼先によって変わります。あくまで一般的な目安としてご覧ください。正確な金額や、お使いの機種の手順については、メーカーの取扱説明書と、JA・農機販売店の見積もりでご確認ください。
急いで決める必要はありません。音を聞き、レバーを戻し、端子を見る。ここまでを落ち着いて進めてから、農機店に相談するかどうかを判断すれば十分です。
セルは回るのに、そこから先でかからない方は、トラクターのエンジンがかからない、修理を呼ぶ前に見る5か所もあわせてご確認ください。