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ヤンマーの公式ページは、田植え機のグリスアップを「50時間または1年のどちらか早い時期に実施」と書いています。一方、井関農機の点検整備ポイントは、オイル注油箇所を「毎日作業前に必ず注油」としています。
2026年9月時点で、編集部が両社の公式ページを開いて確かめた結果です。
つまり同じ「油をさす」でも、グリスと注油では周期がまるで違います。だからこそ、場所を探す前に、いまやろうとしているのがどちらなのかを決める必要があります。
シーズン前に納屋から田植機を出した。グリスガンは買ってある。ただ、どこに差せばいいのか、どのグリスを入れていいのかが分からない。
そんな場面で、販売店に持ち込む前に自分でできる範囲を知っておきたい方に向けた記事です。
結論から言うと、最初に決めるのは場所ではありません。グリスなのか注油なのかを分け、そのあとで取扱説明書の指定を確かめる。この順番を守るだけで、入れる場所も銘柄も決まります。

この記事で分かることは、次の4つです。
- グリスアップと注油は、周期も入れ口も別の作業だということ
- 使うグリスの考え方が、メーカーによって違うこと
- グリスは入れすぎると、かえって植わらなくなること
- 自分でやるといくらか、JAに頼むとどう扱われるか
田植え機のグリスは、どこに・どのくらいの頻度で入れるのか?
前半では、周期、注油との違い、入れる場所、ニップルの探し方、メーカーごとの線引きの順に見ていきます。どれも各社が公式に書いている内容です。
まず周期|グリスアップは「50時間または1年」の早いほうで来る

ヤンマーの田植機のセルフ点検・交換のページには、グリスアップの周期が明記されています。
「50時間または1年のどちらか早い時期に実施。」という一文です。
まず効いてくるのが「早いほう」という書き方です。田植機は1年のうち数日から十数日しか動きません。
ですから稼働時間で50時間に届く前に、1年のほうが先に来る使い方がほとんどになります。
つまり多くの田んぼでは、時間ではなく「シーズンが一巡したかどうか」が実際の目安になります。アワーメーター(稼働時間を示す計器)の数字が伸びていなくても、1年経てば対象です。
実は、動かさない期間そのものがグリスを傷めます。クボタは営農情報で、しゅう動部のグリース切れが部品の早期摩耗や破損につながると書いています。
同じ記事は、1か月以上使わない場合にやることを8項目で挙げています。その中に、しゅう動部のグリースアップが入っています。
ほかに並ぶのは、燃料コックを閉めることと燃料タンクを満タンにすることです。さらにバッテリのマイナス端子を外すことや、定期的にエンジンを始動することも挙げられています。
要するに、格納前の手当てのひとつとしてグリスが位置づけられています。しまい込む作業とグリスアップは、もともと地続きということです。
そのため、使い終わってしまい込む前と、出してきて動かす前の2回が節目になります。1年に1回という条件も、この2回のどちらかで自然に満たせます。
ちなみに、置いてある間に進むのはグリス切れだけではありません。長く置いた機械で何が進むのかは、農機具を雨ざらしにしたときに進む傷みのほうで数字を挙げて整理しました。
毎日やるのは注油|グリスアップとは作業そのものが別
ここを混ぜてしまうと、いくら調べても答えが出ません。井関農機の点検整備ポイントは、田植機の点検表のなかで2つを別の行として立てています。
ひとつが「オイル注油箇所(植付部含む)」で、時期は「毎日作業前に必ず注油」。もうひとつが「グリース注入箇所(グリースニップル)」です。
| 項目 | 注油(オイル) | グリスアップ |
|---|---|---|
| 周期 | 毎日作業前(井関農機) | 50時間または1年の早いほう(ヤンマー) |
| 入れ口 | 注油箇所(植付部を含む) | グリースニップル |
| 道具 | オイル差し・スプレー | グリースガン |
| 主な対象 | リンク支点部・シャフト部・レバー支点 | 植付爪ケース・支持シュー・ローター部 |
実は、周期の差はそのまま役割の差です。注油は動きを軽くするために毎日足すもので、グリスは水や泥の侵入を防いで留まり続けるものだからです。
ヤンマーはグリスの働きを3つ挙げています。軸受けや摺動部の密封性を良くすること、水や塵ホコリの侵入を防ぐこと、そして摩擦力を減少させることです。
このように、グリスは「塗って終わり」ではなく「詰めて守る」ものです。だから毎日入れる必要はなく、そのかわり切らしてはいけません。
トラクターでグリスが切れると軸受けがどう傷み、直すといくらかかるかは、トラクターのベアリング交換費用もあわせてご確認ください。
加えて、井関農機の点検表には油の種類ごとに違う周期が並んでいます。チェンジミッションオイルは、油圧タンクへの補給が初回30時間で、以後は50時間または3年です。
また、ギヤボックスの交換は初回50時間で、以後は同じく50時間または3年とされています。油圧オイルフィルタは初回30時間で、以後は100時間または3年です。
つまり同じ田植機の中に、毎日のもの、50時間のもの、3年のものが同居しています。ひとくくりに「油をさす」と考えると、どれかが必ず抜け落ちます。
なお、井関農機の冊子はNPシリーズをもとにした抜粋です。機種により項目や各部の位置と形状が異なると、はっきり注記されています。
反対に、グリースニップルのほうは見た目で分かります。金属の小さな突起が出ている場所が、グリスを入れる側です。
もし判断がつかないときは、取扱説明書の図で確かめてください。手元の機種に付いていない箇所が図に載っていることもあります。
グリスが入るのは植付部|手を入れる前にエンジンを止める

ヤンマーの公式ページは、グリスアップの対象を大きく3つに分けています。各操作レバー支点は注油、すこやかローター部と植付部がグリスアップという区分です。
そして植付部の内訳として、支持シュー、苗台アーム、苗のせ台規制シュー、植付爪ケースが挙げられています。
さらに苗受板シューについては、スプレーグリスで注油するよう書かれています。同じ植付部でも、入れ方が分かれているということです。
ここで分かるのは、グリスが必要な場所が植付部に集まっていることです。ただし植付部は、手を入れたときにいちばん危ない場所でもあります。
また、支持シューと苗のせ台規制シューは、苗のせ台が滑る面を受けている部品です。ここが渋くなると、苗の送りそのものが重くなります。
つまりグリスの効きは、爪だけでなく苗の供給にも出ます。植わり方が揃わないときに、まず疑われるのがこのあたりです。
クボタは、植付爪の交換・調整・清掃や苗取り出し口の異物の除去を行うときは、エンジンを必ず止めるよう明記しています。ヤンマーも、必ずエンジンを停止し油圧ストップレバーをストップ位置にするよう書いています。エンジンをかけたまま行うと、不意に植付部が動いてケガをするおそれがあるためです。
農林水産省の農作業事故情報(令和8年1月号)も、点検整備は平坦で広い場所に置き、エンジンを止め駐車ブレーキを掛けた状態で行うよう呼びかけています。昇降部を見るときは、ジャッキで固定するなど落下防止をするようにとも書かれています。
もちろん、止めるのは安全のためだけではありません。動いている状態では、グリスが行き渡ったかどうかを目で確かめられないからです。
ヤンマーは、作業後のお手入れとして足回りや回動部のグリスアップを挙げています。あわせて、運転中および運転直後は掃除をしないようにとも書かれています。
そのため、泥を落として機体が冷えてから、という順番になります。作業を終えてすぐではなく、少し時間を置いてから取りかかってください。
ただし、植え付け部そのものが動かないときは、グリスより先に見る場所があります。症状の切り分けは田植え機の植え付け部が動かないときの手順にまとめました。
ニップルの位置は機種ごとに違い、本数は公表されていない

グリスの入り口になるのがグリースニップルです。金属の小さな突起で、先端に逆止弁が入っています。
この位置について、クボタは公式FAQで明確に答えています。「機体に装着されているグリースニップルの位置は、機種ごとに異なっております。」という一文です。
そのうえで、各機種の取扱説明書にイラスト入りで紹介しているため、そちらで確認するよう案内しています。クボタの該当FAQで原文が読めます。
また、井関農機も同じ立場です。注油箇所やグリース注入箇所は機種と型式で異なるため、詳細は取扱説明書に基づき実施するよう注記しています。
編集部が調べた範囲では、田植機のグリースニップルの総本数を示した公式資料は見つかりませんでした。ヤンマー自身も、グリスアップ箇所は型式によって異なると注記しています。
実際に、ニップルには形の違いもあります。まっすぐ立った形のほか、斜めに曲がったものと直角に曲がったものがあります。
そして機体の奥まった場所では、グリースガンを当てられる向きに合わせて形が選ばれています。同じ機械でも、場所によって形が違うということです。
具体的には、JISの規格では立形とエルボ形に分けられ、45度、65度から67.5度、90度の区分があります。通販では従来のA型やB型、C型という呼び方も残っています。
なお、ニップル自体は1個152円前後の消耗品です。ですから、潰れたり山がなめたりしているものは、無理に使わず交換したほうが早く済みます。
ちなみに、農機の世界では「何年」「何本」といった一律の数値基準が示されないことがよくあります。同じ構図はトラクターのタイヤ交換時期でも起きていて、年数の公式基準は存在しません。
メーカーによって、自分でやる範囲の線引きが違う
ここが今回いちばん意外だった点です。クボタの田植機のセルフメンテナンスのページには、グリスアップの項目がありません。
2026年9月時点で掲載されているのは9項目です。エンジン部が4項目、走行部が2項目、施肥部と植付部で3項目という内訳でした。
具体的には、エンジンオイルと燃料フィルタポット、エアクリーナエレメント、バッテリが並びます。そのあとにミッションオイルとミッションオイルフィルタが続きます。
さらに施肥ブラシ・ロール、植付爪、植付アームが続きます。油に関する項目は4つありますが、どれも交換で、グリスアップはありません。
| メーカー | 田植機のグリスアップの扱い |
|---|---|
| ヤンマー | セルフ点検の項目にあり。周期と箇所を明示 |
| 井関農機 | 点検表にグリース注入箇所の行あり。箇所は取扱説明書へ |
| クボタ | 田植機のセルフメンテナンスに項目なし。ニップル位置は取扱説明書へ |
とはいえ、クボタがグリスアップを不要と言っているわけではありません。同社は農業機械全般のFAQで、ニップルの位置を取扱説明書で確認するよう案内しています。
さらにトラクタの長期格納の記事では、グリースアップを項目に挙げています。田植機のページに無いだけで、作業そのものは想定されています。
しかし、田植機のセルフメンテナンスとして並べる項目には入れていません。この差は、手元の機械がどのメーカーかで「自分で触ってよい範囲」の案内が変わることを意味します。
実際に、クボタは同じページの冒頭で、メンテナンス前に必ず取扱説明書を読むよう求めています。あわせて、不安な箇所を見つけたらすぐに購入先へ連絡するようにとも書かれています。
したがって、参考にするページは自分の機械のメーカーのものに合わせてください。よそのメーカーの手順をそのまま当てはめると、箇所も周期もずれます。
ちなみに、メーカーごとに案内の立て方が違う例は田植え機のエンジンがかからないときでも同じでした。ヤンマーはガソリンとディーゼルで分けていて、クボタは部位ごとに分けています。
田植え機のグリスの選び方と、自分でやるか頼むかの分かれ目
後半は、銘柄の選び方、継ぎ足しの注意、入れすぎたときに起きること、そして費用の順に見ていきます。
使うのは万能グリス|ただし取扱説明書の指定が先に立つ

銘柄選びについては、ヤンマーが公式FAQで具体的に答えています。
- 「トラクターのドライブシャフトやコンバインの転輪、田植機の植付アームなどのグリスアップには、万能グリス(マルチパーパスグリス、シャーシグリス)をご使用ください。」
そして続けて、取扱説明書にグリスの種類を指定している場合は指定のグリスを使うよう添えています。ヤンマーの該当FAQで読めます。
一方、クボタは別の答え方をしています。オイルやグリースについて市販品を使った場合はメーカ保証の対象外となるため推奨しない、という立場です。
確かに、規格の面から見ても両者は矛盾しません。クボタは、粘度などの規格が合っていても化学的組成の違いが性能に影響しうると説明しています。
売り場でよく見るのは、かたさを表すちょう度の番号です。JIS K 2220では混和ちょう度が数値で区分され、2号は265から295の範囲とされています。
実際に、農機用として売られているカートリッジの多くがこの2号です。クボタの純正グリースも、商品名がNo.2となっています。
また、田植機の植付爪ケース用として売られている専用グリスも存在します。水田で使うため生分解性を持たせた製品で、全メーカー対応をうたうものが1,500円前後から手に入ります。
結論として、順番は取扱説明書が先、次にメーカーの案内、最後に汎用品です。この順で確かめれば迷いません。
種類の違うグリスを継ぎ足すと、かえって性能が落ちる
グリスは油だけでできているわけではありません。増ちょう剤と呼ばれる成分で油を保持させた、半固体の潤滑剤です。
そして、この増ちょう剤が違うもの同士を混ぜると具合が悪くなります。グリース専業の協同油脂は、使用上の注意で異なるグリースとの混合を避けるよう明記しています。
| 種類 | 特徴 | 主な使われ方 |
|---|---|---|
| リチウム石けん | 耐水性・耐熱性・機械的安定性に優れる | 万能型(マルチパーパス)・ころがり軸受 |
| カルシウム石けん | 耐水性は良好だが使用できる上限温度が低い | シャシーグリース・摺動部 |
| ウレア(非石けん系) | 耐熱性・機械的安定性に優れる | 長寿命タイプ・スプレーグリスなど |
ややこしいのは、ヤンマーが万能グリスとシャーシグリスを並べて挙げている点です。ただし油脂メーカーの製品区分では、万能型はリチウム石けん、シャシーグリースはカルシウムで、増ちょう剤が違います。
ですから、どちらでも使えるという案内を「混ぜてよい」と読み替えないでください。住鉱潤滑剤は、同じ増ちょう剤どうしであっても添加剤の影響で性能が低下することがあると書いています。
協同油脂は、増ちょう剤の組み合わせごとに混ざり方を3段階で示しています。かけ離れた変化をする組み合わせもあり、アルミニウム石けんとリチウム石けんがその例として挙げられています。
実際に効くのは、銘柄をそろえることです。1本使い切るまで同じグリスで通し、替えるときは古いグリスが押し出されるまで入れる。これだけで混合の問題はほぼ避けられます。
もし手元に何本か残っているなら、機械ごとではなく箇所ごとに使い分けないでください。同じニップルに違うものを入れるのが、いちばん避けたい使い方です。
なお、油脂を選ぶときに純正か汎用かで迷う構図は、トラクターのオイル交換費用でも同じでした。
入れすぎると、かえって植わらなくなる

グリスは多いほど安心、と考えたくなるところです。ただしヤンマーは、はっきり逆のことを書いています。
「グリスを多く入れ過ぎると、プッシュロッドの働きが悪くなり植付け不良が発生します。」という一文です。
プッシュロッドは、植付爪から苗を押し出すための部品です。ここの動きが鈍れば、爪は回っているのに苗が落ちないという状態になります。
つまり、植わらないからグリスを足すという対処が、症状を重くすることがあります。足す前に、前回いつ入れたかを思い出してください。
目安としては、ニップルから入れて古いグリスが押し出されてきたら止めます。手応えが急に重くなったら、それ以上は入らないサインです。
加えて、入れる前に周りの泥を拭き取ってください。ニップルの先に泥が付いたまま押し込むと、泥ごと中に送り込むことになります。
実際に、潤滑機器メーカーは詰まりの原因として汚染と給脂間隔の不足を挙げています。田植機のように年に数日しか動かさない機械は、あとのほうに当てはまりやすい側にいます。
要するに、量ではなく回数で守る機械だということです。シーズンごとに適量を入れ直すほうが、まとめて押し込むより機械には優しくなります。
ちなみに、植付爪そのものにも交換の基準があります。クボタは3mm以上摩耗したとき、ヤンマーも破線位置まで摩耗したときを交換時期としています。
そのため、グリスを入れても植わり方が戻らないときは、爪の摩耗を疑う番になります。グリスで直るのは動きの渋さであって、減った金属は戻りません。
自分でやると3,200円前後、JAに頼むと点検整備の料金に入る

道具はそろえても高くありません。2026年9月時点の通販サイトの表示価格を並べてみます。
| 品目 | 価格(税込) |
|---|---|
| グリースガン 400g用 レバータイプ | 2,198円〜 |
| クボタ 純グリース No.2 400g(07909-40120) | 958円 |
| 汎用リチウムグリース 400g | 626円〜 |
| 田植機専用グリス(生分解性・190g) | 1,520円 |
| グリースニップル 1個 | 152円前後 |
最小構成なら、グリースガン2,198円とクボタ純グリース958円で3,156円です。カートリッジ1本は何シーズンも持ちますから、初年度だけの出費と考えてかまいません。
では、頼むといくらでしょうか。ここで分かったのは、料金表にグリスアップという項目が無いということでした。
編集部がJAの公開料金表を5件確かめました。対象はJAハイナン農機センターとJA伊勢、JA東美濃、JA兵庫みらい、JAみなみ魚沼です。
そして5件のいずれにも、グリスアップ単独の料金はありませんでした。「給脂」や「注油」という語も見当たりません。
実際の点検整備料金は、JA伊勢が歩行2条7,700円で、乗用4条から6条は19,800円からです。JA東美濃は歩行12,000円と乗用4条17,600円でした。
また、JA兵庫みらいは4条30,800円からで、8条の施肥機付きでは114,500円まで上がります。JAみなみ魚沼は条数別ではなく、時間工賃8,800円と出張料2,200円という立て方でした。
つまり、依頼先の種類よりも地域差のほうが大きく出ます。同じ4条の乗用でも、17,600円と30,800円では倍近い開きがあります。
ただし、同じ「点検」でも整備料金を含むものと含まないものがあります。金額を並べて比べる前に確かめる点は、トラクターの修理費用の相場で整理しました。
逆に言えば、自分でグリスアップをしても点検整備の料金は下がりません。頼むかどうかは費用ではなく、どこまで自分で見るかで決めることになります。
ただし、シーズン中に自分で足せる体制があると、作業を止めずに済みます。田植えは日程が詰まりやすく、来てもらうまでの待ち時間が費用より痛いこともあります。
そこで、道具だけ用意しておいて点検整備は頼む、という組み方も現実的です。3,000円台の初期費用は、1日の遅れと比べれば小さい額になります。
よくある質問(FAQ)
グリスガンが無いときは、スプレーグリスで代用できますか?
用途が別です。ヤンマーは苗受板シューについてスプレーグリスでの注油を案内していますが、ニップルから内部へ送る作業はグリースガンでないとできません。
スプレーは露出している摺動部やチェンに使うもの、と考えてください。市販のスプレーグリスは増ちょう剤がウレアの製品もあり、ニップルに入れたリチウム系グリスと種類が違うことがあります。
ニップルにグリスガンを当てても、グリスが入っていきません。
ニップルの内部で固まったグリスが詰まっていることがあります。潤滑機器メーカーのグレコは、詰まりの原因として不適切なグリースや給脂間隔の不足、汚染を挙げています。
無理に高い圧力をかけると部品を傷めるおそれがあるため、ニップルそのものを交換するか、販売店に相談してください。ニップルは1個152円前後の消耗品です。
使い終わったグリスのカートリッジは、どう捨てればいいですか?
クボタは公式FAQで、オイル類やグリースの処分先として購入した販売店、ガソリンスタンド、ホームセンター等で買える廃油処理箱、産業廃棄物業者の4つを挙げています。
あわせて、下水や川などに流すのは違法行為だと明記しています。自治体によっては産業廃棄物扱いで回収できない場合があるため、持ち込む前に確認してください。
高圧洗浄機で洗ったあとは、グリスを入れ直したほうがいいですか?
農機メーカーが田植機について「高圧洗浄でグリスが流れる」と明記した資料は、編集部が調べた範囲では見つかりませんでした。
ただしクボタは高圧洗浄機を拡散状態で2メートル以上離して使うよう案内しており、丸山製作所は高圧洗浄機の取扱説明書で、可動部やシール部に水が浸入すると破損や内部の錆の原因になると書いています。洗車のあとに乾かしてからグリスアップする流れにしておくと確実です。
【まとめ】田植え機のグリスは、この順番で決める
ここまでを、手を動かす順番に並べ直します。
1. いまやるのが注油かグリスアップかを分ける(毎日は注油、50時間または1年がグリス)
2. 手元の取扱説明書でニップルの位置を確かめる(本数は公表されていない)
3. 銘柄は取扱説明書の指定が最優先、指定が無ければ万能グリス
4. 入れるのは古いグリスが出てくるまで(足しすぎは植付け不良のもと)
5. 触る前にエンジンを止める(植付部は不意に動く)
この5つのうち、いちばん見落とされるのが1番です。毎日の注油をしていれば大丈夫だと思っていると、グリスのほうが何年も切れたままになります。
そして2番を飛ばすと、入れる場所が毎年ずれます。取扱説明書の図を1回コピーして、納屋に貼っておくほうが確実です。
反対に、グリスを入れても症状が変わらないときは、原因が別にあります。そのときは足すのをやめて、販売店に見てもらうほうが早く終わります。
見てもらった結果、直すより手放すほうが安く済むと分かることもあります。そのときは、田植え機の処分方法と粗大ごみに出せない理由もあわせてご確認ください。
最後に、費用の見通しも整理しておきます。自分でやるなら初期費用3,156円、頼むなら点検整備の料金に含まれる、という関係でした。
なお、この記事の金額は2026年9月時点の公表価格をもとにした目安です。機種・年式・状態・地域・依頼先によって変わります。
作業の手順や適合するグリスの種類は、必ずお手元の取扱説明書に従ってください。判断に迷うときは、メーカーの販売店やJAの農機センターにご相談ください。